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Thermus thermophilus リボソーム変異株の創成と進化 (宮崎 健太郎・産業技術総合研究所)
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Thermus thermophilus リボソーム変異株の創成と進化
(宮崎 健太郎・産業技術総合研究所)
冥王代にHabitable Trinityの場で誕生した生命は、以来、極めて多種多様な種に分化し、地球上のあらゆる環境に適応している。本課題では、生物繁栄の基礎を築いた「種分化」のプロセスを実験的に再現し、生命誕生に続く生物進化の謎を解き明かしたい。
本課題の着想は、申請者らが見出したリボソームの可塑性に基づいている。従来、リボソーム等、セントラルドグマの維持に関わる分子装置(デコーディング装置と呼ぶ)は、極めて種固有性が高く、わずかな変異が生育不全を招くと信じられてきた。これに対し申請者は、大腸菌リボソームの中核成分である16S rRNAが、系統学的な門を超え遠縁のバクテリア由来のもので置換可能であることを見出した。さらに、翻訳系の改変された変異株は、一旦生育不良に陥るものの急速にその生育を回復することを見出した。生育復帰株の遺伝学的解析から、回復の主要因はゲノム内変異であることが確認された。これらの予備的知見を踏まえ、本研究では生命の起源に近いThermus thermophilusの16S rRNAを異種生物のものと置換する。様々な微生物起源のもので生育相補性を検証し、進化系統上の相補限界を解明する。異種16S rRNAにより遺伝子発現系を支配されることとなったThermus変異株を、野生株の生育が不適な環境を含む様々な環境下で適応進化させる。野生株、変異株について進化前後の微生物学的な特徴付け・ゲノム解析を行い、微生物生理の類縁性と変異の関係を明らかにする。最終的には別種と呼べるほどに微生物学的特徴の異なる変異株の獲得とそれに至る進化経路を明らかにしたい。