A06班: 冥王代生命学の創成公募班
RNA進化を可能にする冥王代の細胞構造の探索
(市橋 伯一・大阪大学)
細胞のような微小区画構造は、生命の誕生と進化に必須な条件だと考えられている。実際に私達は、原始生命の実験モデルであるRNA複製反応系を用いて、進化が起こるためには微小細胞構造が必要であることを示した(Ichihashi et al 2013 Nat Commun and Bansho et al PNAS 2016)。さらにその細胞構造は、ある程度安定であり、かつ材料供給のために定期的に破壊と再生を繰り返す必要があることを示した。しかし、原始地球でどうやってそのような性質をもつ細胞構造が達成されるのかは未だ不明である。そこで本研究では、冥王代に存在した間欠泉とそこから噴霧される微小水滴がRNA進化を可能にした原始の細胞構造ではないかという新しい仮説を検証するために、以下の2点を実施する。
1)間欠泉で生成される空気中微小水滴がRNA複製反応場として働くかどうかを検証する。
2)間欠泉による微小水滴化と凝集を繰り返すミニチュア原始地球モデルを構築し、その中で実際にRNAが自発的進化を起こすかどうかを検証する。
本研究により、これまで不明であった原始の細胞構造について、原始地球科学と生化学の両面の証拠を伴った有力な仮説を提唱できる。微小水滴中でRNAが進化することができれば、RNAワールドやRNA-ProteinワールドからDNA-RNA-Proteinワールドへと進化していき、生命誕生へとつながっていく。本研究により、原始地球科学と生化学が融合した新しく説得力のある生命誕生のシナリオを提唱できるようになると期待される。