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冥王代プレ生命システムの実験室内再現(上田 卓也・東京大学)
OLD_A06班: 冥王代生命学の創成公募班
冥王代プレ生命システムの実験室内再現
(上田 卓也・東京大学)
生命の起源に迫ろうとする時、現在の遺伝子発現のようなtop-down 的な生命システムのイメージに拘泥するべきではない。地球が、冥王代においてマグマオーシャンという高分子の合成に適した条件にあり、生体高分子が脱水重合体であることを考慮すれば、タンパク質、核酸、脂質などの高分子が、海の誕生以前には地表にポリマーの状態で蓄積されていたと考えるべきであろう。地球の冷却による海の出現は、タンパク質は疎水性を内部に持つような構造の形成を促し、脂質による細胞様の構造体を生じさせたのではないであろうか。常時水の存在する環境は、タンパク質内部の疎水的なコアが触媒の反応場となり、また水分子による攻撃は高分子の部分のシャッフリングを生んだのであろう。また有用なポリマーの情報を保存するような反応(例えば逆翻訳)が進むことで、情報の蓄積がうまれたのではないであろうか。この仮説が妥当であるなら、生命の起源の分子をタンパク質ポリマーに探索することが自然であろう。
本研究では、生命の基本となる高分子(タンパク質、核酸、脂質)はすでに準備されていたと考え、冷却により海が出現した直後に生じたと考えられる高分子の再編成とハイパーサイクル的ネットワーク形成のプロセスを、実験室内で再現することを目指す。例えば、脂質による疑似細胞様の構造を持つリポソームを融合、分裂を惹起するタンパク質をリポソームディスプレイ法によりde novo で合成する。つまり、機能を有する細胞様機能を有するタンパク質の実験室での創出し、冥王代におけるプロテインワールドの妥当性を検証する。